血糖値とは?その評価と現実
1997年現在の日本の診断基準では、糖尿病を示す数値ではありません。
ところが負荷後初分には血糖値は188mg/dlに上昇し、さらに2時間後には222mg/dlまで達したのです。
これは立派な糖尿病です。
男性も同じようなケースでした。
空腹時血糖は、きわめて正常でした。
一般的な空腹時血糖の検査だけでは、誰もこの男性が糖尿病だとは疑わないでしょう。
ところが、負荷1時間後の血糖値はなんと271mg/dl、さらに2時間後になると309mg/dlにも急上昇していたのです。
これは糖尿病としてコントロールが必要な状態ですが、怖いことに糖尿病はそれまで見つかっていなかったわけです。
米国で糖尿病診断基準が126mg/dl以上に下げられたのは、こうした例を重視したためなのです。
米国の研究者たちは、食後2時間の血糖値が200以上の患者さんの例を集め、彼らの空腹時血糖を一つ一つ調べていったのです。
結果は、多くの例で空腹時血糖は120 から130のあいだでした。
つまり、検査で空腹時血糖が120台であっても、食後2時間の血糖値が200以上になっている可能性は否定できない、ということがわかったのです。
言い換えれば、いままで空腹時血糖を140以上としていたために、どれだけ多くの「かくれ糖尿病」 を見逃していたか、ということです。
診断基準の引下げは、こうして実施されることになりました。
日本でも、まもなく改定されるかもしれません。
糖尿病に関しては、以前から「遺伝的な関係がある」というような言い方がされています。
たしかに糖尿病の多い家系はありますし(家族集積性が高い)、一卵性双生児では糖尿病発症の一致率が高いことも確認されています。
また両親が糖尿病の場合、その子供の擢患率は約6 割にのぼります。
片親が糖尿病なら、約3割です。
したがって、遺伝がなんらかの要因として関係していることは確かなのです。
しかし、いままでは「状況証拠」でしかありませんでした。
遺伝子の研究が進んできた現在、もう少し詳しいことがわかってきています。
遺伝子の解析が進んできたため、病気の原因についても単に「遺伝との関連」というあいまいな言い方ではなく、「遺伝子のどこに異常があるのかというような突っ込んだ議論がなされるようになったのです。
インスリン依存型(若年型) 糖尿病では、HLA遺伝子が関与しているのですが、日本の糖尿病患者の圧倒的多数を占めるインスリン非依存型(成人型) 糖尿病は多因子遺伝であり、インスリン、インスリン受容体、HNFなどの単因子による遺伝形式は1パーセント以下と言われています。
単因子遺伝要因のなかで、「ミトコンドリアにおける異常」が最近になって大きな注目を浴び、日本人の糖尿病の100人に1人13人がこのタイプではないか、などと言われています。
この遺伝は、母系遺伝です。
また、生まれつきの難聴(感音性難聴) を伴うことが多いということもあります。
お母さんが糖尿病で、小さいころから難聴気味だったという糖尿病の患者さんは、遺伝的な関わりが考えられるということになります。
寸遺伝子のミトコンドリアの異常」が、どうやって糖尿病を引き起こすのかはまだ不明な点も多いのですが、インスリンを分泌するβ細胞のミトコンドリアの機能低下がインスリンの分泌低下を引き起こすのではないかと推定されています。
遺伝子異常という具体的な病因が、いま必死でさぐられています。
糖尿病は遺伝的な生まれつきの要因に、さまざまな生活環境がからまって発症してきます。
「肥満」は、そのなかでも最も危険な要素の一つといえるでしょう。
熟年期を迎えると、基礎代謝量が落ちてくるため、体は若いときのようにエネルギーを必要としなくなります。
それでも同じように食べるので自然に体脂肪がつき、「中年ぶとり」になっていきます。
この中年ぶとりが成人型糖尿病を引き起こすということもです。
肥満の定義はいろいろありますが、成人病と最も深い関係にあるのは体についた脂肪の割合、いわゆる寸体脂肪率」です。
同じ身長・体重でも、骨や筋肉が太い人はそれだけ脂肪が少なく、肥満度は小さいことになります。
肥満かどうかは、単に体重だけでなく体脂肪率によっても考えられなければいけません。
ところで、肥満がなぜ糖尿病の引金になるのかということも、実は体脂肪の量が大きく関係していたことがわかってきました。
「内臓脂肪の割合と、ブドウ糖の利用率は反比例する」ということです。
ブドウ糖を利用するということは、エネルギー源として代謝するということです。
それを助けるのがインスリンのはだらきですが、そのはたらきは筋肉ばかりでなく脂肪組織でも発揮されています。
しかし、内臓に脂肪がついているほど、ブドウ糖は利用されにくくなり、血糖は上がっていきます。
もっと簡単に言えば、肥満するほど糖尿病になりやすくなるということになります。
こうして、脂肪組織と糖尿病の関係がデータとして立証されたのです 。
一方、脂肪組織のなかには、皮下脂肪や内臓脂肪のようにエネルギーを貯蔵するのではなく、エネルギーを燃やす褐色脂肪というタイプの脂肪があることがわかってきました。
同じように食べ、行動していても、太る人と太りにくい人がいます。
エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞ばかりの人は、褐色脂肪細胞が多い人よりは太りやすいと言えるのかもしれません。
いずれにしても、糖尿病と体脂肪の関係は、ほうっておけば双方が影響しあいつつ悪化の道をたどります。
また、糖尿病の患者さんは、同時に高脂血症をもっているケースが少なくありません。
約3分の1が中性脂肪やコレステロールも高いとされます。
これは、糖尿病があることによって、二次的に高脂血症が起こっているという可能性を示しています。
まず糖尿病の血糖値をコントロールしたうえで、その結果コレステロールなどの値がどう変化するかをみきわめて、それでも高いようなら高脂血症の治療をどうするかと考えなければなりません。
ここでも大切なのは、早期治療なのです。
「糖尿病は、死ぬまで治らない怖い病気と考えられています。
たしかに完治する例は少なく、長期のうちに恐ろしい合併症が起こる可能性もある糖尿病です。
一方で、うまくコントロールして長生きする人もあります。
経過にも個人差の大きい病気ですから、いたずらに怖がることはありません。
糖尿病になったからといって、悲観は禁物です。
しかしながら、病気は楽しいものでもありません。
同じように太っていても糖尿病になる人とならない人がいるのは、不公平なような気もします。
「体質だから仕方ない」と割り切る人もいるかもしれません。
それは当たっていないこともないのですが、よく考えてみるとあいまいな言い方です。
「ではいったい、体質とはなんぞや」ということになります。
一つは、脂肪組織のタイプです。
近い将来、脂肪組織を調べることによって若いうちから糖尿病予備群を割り出し、的確な予防措置がとられるようになるかもしれません。
その根拠となっているのは、すでに述べたように脂肪組織のなかでもエネルギーを燃やす役割を果たしている褐色脂肪組織です。
同じ脂肪組織でも、エネルギーを貯蔵するほうの白色脂肪組識は、肥満型の人に多いと言われています。
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